中学生向け出前講座を実施しました 少子高齢化を「数字」から「暮らし」へつなげて考える

株式会社Tri-Arrow(トライアロー)は、地域の未来を担う子どもたちと一緒に社会課題を考える取り組みとして、岐阜県の下呂中学校にて出前講座を実施しました。

今回のテーマは 「少子高齢化と孤独死」
ニュースで聞く言葉を、自分の住む地域の現実として捉え直し、「なぜ起きるのか」「進むと何が変わるのか」「私たちは何ができるのか」を、データと具体例を使って一緒に考える時間にしました。

①講座の目的:怖がらせるのではなく、“考えて行動できる”土台をつくる

孤独死という言葉は刺激が強く、扱い方を間違えると「怖い」で終わってしまいます。そこで講座では、次の3点を大切にしました。

  1. 背景の理解(少子高齢化が“単独の原因”ではなく、複数の要因が重なって進むこと)
  2. つながりの理解(人口の変化 → 家族・世帯の変化 → 生活の課題 → 見守りの難しさ、という流れ)
  3. 行動の理解(“自分にできること”を小さくても具体的に持ち帰る)

知識を増やすだけでなく、「自分の生活の中で何ができるか」まで落とし込むことをゴールに置きました。

②講座の流れ:地域の数字を“暮らしの変化”として読み解く

講座は、次の順番で理解が積み上がるように構成しました。

1)「少子高齢化」とは何か(言葉の整理)

まずは用語を揃えます。
「高齢者」「後期高齢者」「子ども」など、基準を確認し、同じ言葉でも人によってイメージが違うことを共有しました。ここを丁寧にすると、その後の話が“ふわっとした印象論”になりにくくなります。

2)下呂市の現状を“比較”で見る

次に、全国と地域を比べながら、数字が示す意味を一緒に考えました。
「高齢化率が高い/年少人口割合が低い」という表現は簡単ですが、授業ではさらに踏み込みます。

  • 学校、部活、地域行事、商店の数は今後どうなる?
  • 支える側(働く世代)の負担はどう変わる?
  • 一人暮らしの高齢者が増えたとき、日常の困りごとは何が増える?

こうした問いを挟むことで、数字が“生活の変化”として見えてきます。

3)なぜ進むのか(要因はひとつではない)

少子高齢化の背景は「子どもが減る」だけではありません。
出生率、未婚率、晩婚化、世帯構造の変化、平均寿命など、複数の要因が絡み合い、結果として地域の人口構造が変わっていくことを説明しました。

ここでは「誰が悪い」という話にしないように注意しながら、
社会の仕組みや暮らし方が変わると、結果として人口構造も変わるという“構造の見方”を持ってもらうことを狙いました。

核心:少子高齢化が進むと「単身高齢者」が増え、見守りが難しくなる

講座の中心は、「少子高齢化 → 孤独死」という直結の話ではなく、途中にある “単身高齢者の増加”“つながりの薄れ” を理解してもらうことでした。

たとえば、家族が近くに住んでいた時代は、自然に起きていたことがあります。

  • 近所で顔を合わせる
  • 家族が様子を見に寄る
  • 町内のつながりで異変に気づく

ところが、世帯構造や働き方、住まい方が変わると、同じことが自然には起きにくくなります。
つまり問題は「気持ち」だけではなく、生活の構造として“気づきにくくなる”こと。ここが重要なポイントです。

④「72時間の壁」と「死後の尊厳」:早く気づくことの意味

孤独死の話題では、単に人数やニュースを紹介するのではなく、発見が遅れることで何が起きるかを、できるだけ静かに、丁寧に伝えました。

  • 発見が遅れると、本人の尊厳を守りにくくなる
  • 家族や周囲への精神的負担も大きくなりやすい
  • だからこそ、「元気なうちから、日常的につながる」ことが大切

ここは“恐怖”に寄せるのではなく、
「人として大切にされるべきもの」という価値の話として扱い、受け止め方が前向きになるように工夫しました。

⑤生徒さんの反応:学びが“行動”に近づいた瞬間

講座後の感想では、次のような趣旨の声が多く見られました。

  • 「孤独死が遠い話ではなく、身近に起こり得ると感じた」
  • 「少子高齢化の要因(出生率・未婚率・核家族化など)とつながっていると分かった」
  • 「祖父母や家族との連絡を増やしたい/安否確認を意識したい」
  • 「探究学習で地域課題として考えたい」

“知った”で終わらず、自分の生活の小さな選択に結びつき始めたことが、何より印象的でした。

⑥講座を通して伝えたかったメッセージ

社会課題は孤独死だけではありません。環境、福祉、教育、地域づくり…課題はたくさんあります。
でも、課題を知り、構造を理解し、話し合い、できる行動を選ぶ。その積み重ねで地域は変わっていきます。

この講座が、生徒の皆さんにとって

  • 探究学習のテーマ設定
  • 進路や仕事を考える視点
  • 家族や地域との関わり方

のヒントになれば嬉しいと考えています。

⑦出前講座について

株式会社Tri-Arrowでは、学校・地域団体向けに、高齢化や見守り、孤独死などにおける地域課題を「自分ごと」として考える出前講座のご相談を承っています。
対象学年・授業時間・ねらい(探究学習/キャリア教育など)に合わせて内容調整が可能です。

興味関心がある方は是非一度お問い合わせください。

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